2016年01月01日

新年のご挨拶

 新年あけましておめでとうございますm(_ _)m

 この2年間、医師生活の多忙さがピークを迎えていたこと、またその一方で、僅かばかりの余暇を、英語のキラーコンテンツ「SOEL」の作成に全て振り分けていたことで、このHPの更新が著しく滞っていました。

 2015年いっぱいをもってSOELの原型が完成し、英語・生物と、動画講義の展開も一段落つけることができました。
 これらの2科目については、保守・維持・アップグレード・そして派生を大切に行っていきます。
 今後の動画の展開については、受験科目を視野に入れつつ、受験科目にこだわらない自由なコンテンツ供給についても前向きに検討したいと思っています。ただし、いずれも多忙さとの兼ね合いになってくるので、未確定な状況です💨

 一方で、2016年はこちらのHPの積極的な更新を再開していこうと思います。
 Kindleとバッティングしないように、勉強法をまた少しずつ更新していきます⤴
 また、あえて避けてきたところもあるのですが、「もっと、とらますく講師自身の話を聞きたい」というリクエストがこれまで多くあったことも事実です。それに応えて、「勉強法」の枠にとどまらず、いろいろな話をしたためていきたいと考えています。
 教育関連の話はもちろん、医学・医療の話、私自身の人となりの話、適当なサブカルの話など・・・エッセー的な更新を多く織り交ぜていきたいと思います💡
 たまに毒舌気味になることもあるかもしれませんよ👊

 ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


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2016年02月10日

SPEED今井絵理子出馬!?

 たまには息抜き記事でも💨

 芸能人出馬ってのはいつも賛否両論巻き起こるものですし、そんな話題には飽き飽きしているので、この方が政治家としての資質を満たすかどうかは別にどうでもいいです。
 ただ、私が選挙において毎度非常に(×100)不満なのが、政治家/候補者の「能力」に関するインフォメーションがとても少ないことです💢
 為政者としての資質を満たす者も、そうでない者も立候補するのは自由ですし、それに投票するのも自由です。ただ、有権者がその判断の正確性を高めるには、正しい情報がなければ何も始まりませんよね?

 政治信条とかマニフェストとかは、皆嘘ばっかりですから、私はそもそもあまり信頼していません。でも、それ自体はしょうがないことだと思っています。嘘ではなくても、なかなか実現できないことだってあるでしょうしね。民主主義政治自体が、そのような壮大な無駄の上に成り立っているプロセスでもあるので、ブーブー言ってもそれを解決することは実際、難しいです🌙
 でも、一番の問題だと私が思うのは、「その人が能力がある人なのかどうか」を端的に知らせてくれる情報がかなり隠されている(少なくとも非常にアプローチしにくい)ことです💣

 具体的には、学歴・職歴・活動実績(具体的に今まで何を実現したのか)・犯罪歴です👊
(別項で半分冗談で述べたことがありますが、センター試験の得点も入れたら相当面白くなるんですが)

 私、一度区議会議員選挙があったときに、候補者がワンサカいるくせして、一人ずつネットで調べていっても、これらの情報が全く得られなくてキレそうになったことあります(笑)。
 もうね、これらの履歴書的情報を候補者全員、同じフォーマットで書けと。それを一覧形式にして選挙前に有権者に公開しろという話なのですよ。
 そうじゃないと、政治信条とか以前に「能力のありそうな人」を選べないでしょう?だから野々村みたいなの選んじゃうんですよ。
 あれね、テレビなんかで「吟味もせずに選んでしまった有権者側自身も反省が必要」とか言いますけど、私が同じ地域に住む市民だったとしても、十分選んでしまってた可能性ありますよ。だって、判別するための情報がそもそもないんですもん。それで、「維新」とか「改革」だとかを口先で謳われてしまえば、日頃の仕事で忙しいなか深く考えずに、信じて投票してしまうということは大いにありえる話です。

 とりあえず、フォトショップ修正満載の気持ち悪い笑顔と、馬鹿なキャッチフレーズをデカデカと押し付けてくる選挙ポスターを廃止して、あの掲示スペースに各候補者の履歴書を貼ってほしいです✋
 写真なんて、左上に証明写真の小さいやつ貼ってあればいいんですよ(笑)
 それで候補者を見比べたら、だいぶ投票選択に正確性が増すと思います。政治的な議論を戦わせるよりも遥かにベーシックなレベルで、こういう「ゲームのルール」に調整を加えてやらないと本質的には永久に何も変わらないですよ♨
 全国の市長さん、区長さん、次回の地方選挙からでもできる改革ですよ、これは?どうしてやらないんでしょう?(選挙カー廃止も)

 自分が政治に影響及ぼす力を持っていたら、速攻でそうさせるように、地方行政レベルから圧力かける気満々なんですけどね。そのためには今の100倍はお金ないとダメですね(笑)💦


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2016年02月14日

覚醒剤×清原逮捕

 世間を騒がせているこの一件について、記事を書こうと思います。
 実は、清原氏が薬物を使用しているであろうということは、私自身逮捕前からそれとなく知っていました。まぁ、既に報道にもある通り、彼は何度か薬物中毒と思しき症状で救急受診をしていますからね。逮捕もやっぱりという感じです💨

 日本では、麻薬と覚醒剤では、適用される法律が異なります。前者は「麻薬及び向精神薬取締法」、後者は「覚せい剤取締法」です。もっと言うと、大麻は大麻でまた別の「大麻取締法」によって規制されます。
 日本独特の歴史的背景があって、こんな感じで少し複雑になってしまっているんですね。確かに薬物のカテゴリとしては別物ではあるんですが。

 ユニークなのは、医師が麻薬中毒者であると診断したときは、速やかに届け出る義務がある一方で、覚醒剤に関してはその義務は必ずしもない(特に国公立病院でなければ)ということなんですね。これは法律の違いによるわけですが、直したほうがいい部分ではあると思いますね。基本的に、日本は覚醒剤に関しては法律が甘すぎるんですよ。
 覚醒剤の販売は、裏社会の収益源の主力になっている(日本は麻薬の流通は少なくて、ほとんどが覚醒剤)ので、おそらく様々なプレッシャー(意味深)により進まないんでしょうね・・・。お金はたくさんもっているがインテリジェンスがないスポーツ選手は、正直、恰好の標的と言わざるを得ません。
 薬物に関しては学校教育、それも義務教育の範囲である中学校の間にきちんとした教育が必須であると思います。薬物使用者のビフォーアフター写真あるじゃないですか、あれを見せるべきですよ💣
 口先でダメといったり、タレントを起用してキャンペーンをしたって何も響きません(起用されたタレント自身がやっちゃってるんですから・・・)。あまり小さい子に見せたらトラウマになりますが、15歳なら大丈夫ですよ👊
 
 私は薬物の話を聞くのが好きでして(笑)、元マル暴の警官OBにじっくり教わったこともあるのですが、「1度でも手を出してしまったらもう終わり」ということは本当に強調しないといけません。これらの危険薬物は依存性が強すぎて、一度やってしまったら、基本的に二度と戻ってこれません。騙されたりして、本人の意図に反して初回使っちゃったとしても、もうダメなんですよ。そうやって善良な人をハメる恐ろしい手段も私は聞きましたが、悪用されるとよくないのでここでは言えません・・・。
 清原氏も正直厳しいでしょう。今回の件が区切りついた後も、何度でも繰り返して、スッカラカンになるまで裏社会の餌食にされるのが既定路線です(そうならなければ奇跡というレベル)。ですから、啓発も、「クスリはダメ」という以前に、そもそも「悪い人達に近づかない」という段階から大事になってきますね🚩


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2016年03月08日

シャラポワ選手のドーピング〜メルドニウムの効果とは?〜

 テニスのシャラポワ選手のドーピングがニュースになっていましたので、時事ネタとしてこれについて書いてみたいと思います。
 彼女が使用していたとされるメルドニウムという薬の効用が、案外理解が難しく、私も一生懸命調べてしまったのでその成果発表もかねています(笑)

 まず、前提知識として「L-カルニチン」という物質を知っておかないといけません。
 これは特殊なアミノ酸の一種で、エネルギー源の一種である脂肪酸を、エネルギーを産生する工場であるミトコンドリアという場所へ運搬する役割をもっています。
 これが特に重要な働きをする臓器が心臓です。
 呼吸のエネルギー源には、脂肪酸以外にも糖質(炭水化物)も重要なものとして挙げられるのですが、心臓では脂肪酸をメインで使うという特徴があります(逆に脳なんかは糖分一辺倒です)。
ですから、L-カルニチンが不足すると、心臓で効率よくエネルギー産生ができない、すなわち心臓の収縮力が落ちるという害が生じるわけです。
 L-カルニチンは日本でも薬剤として承認されていて、慢性的な心不全(=心臓の収縮力が弱っている)の患者さんで、カルニチンが実際に低下している人などに投与されます。

 次にいよいよ、シャラポワ選手が使っていたメルドニウムですが、これは「L-カルニチンを低下させる薬」だというんですね。L-カルニチンを合成する酵素である「γブチロメタニンヒドロキシラーゼ」を阻害することで、L-カルニチンを低下させるとされています。しかも、「心臓を保護する作用がある」なんて書かれているのです。
 ここで、いっぱしの医者としては「!!???」となるわけです。
 つまり、前述したように、L-カルニチンは端的に言えば「いいやつ」と考えられるわけで、それを減らすメルドニウムが、なぜそれはそれで「よい薬」とされているのかが、つながらないのですね。

 そこで、一生懸命調べました(笑)。

 原理としては、以下のようになるみたいです。
 心臓が使うエネルギー源は、普段は脂肪酸が優位ですが、もちろん糖質も使わないわけではありません。
 そこで、メルドニウムを使ってL-カルニチンを低下させると、「あぁ脂肪酸はあんまり使えないや」ということで、使用するエネルギー源を、糖質のほうにシフトするらしいのです。
 生化学的な知識になりますが、ブドウ糖(糖質)と、脂肪酸をエネルギー源として比較したとき、単位あたりのエネルギーを生み出す際に消費する酸素(O2)の量は、脂肪酸のほうが多くかかります。
 ですから、特に心筋梗塞の直後などで、心臓が虚血になっている状態(酸素が足りないよ〜という状態)では、メルドニウムを使うことで、酸素の需要を減らすことができ、保護的に働くというわけです。

 ・・・うむ、とりあえず機序はわかりました。
 論文の中には、「L-カルニチンとメルドニウムを両方投与したら、もっとよい効果が出たよ」なんていうのもあって、カルニチンを増やしたいのか減らしたいのかどっちなんじゃ〜という気もするのですが・・・。まぁ、メルドニウムは、「イイ感じに調整してくれる」というチャラいことを言っているみたいです。胡散くさいですね👓
 そんな胡散臭さもあってか(!?いえ、エビデンスが乏しいためです)、日本や米国ではL-カルニチンと違って、メルドニウムは薬剤として認可されていません。

 さて、健康なスポーツ選手が使うと、どうなんでしょう。
 激しい運動をして、心臓の酸素需要は一時的にはすごく高まるでしょうから、確かに使用エネルギー源が糖質にシフトするメルドニウムは有利なのかもしれません♨
 しかし、じゃあ逆にL-カルニチンを使ったら不利になるかって言われれば、そんなこともないと思いますよね(脂肪酸を使う効率が増してエネルギーがよく産生できる)。それこそ両方使えばいいのかもしれません(笑)。L-カルニチンはサプリメントでもありますからね。

 というわけで、興味本位で異様に詳しくなってしまった、シャラポワ・メルドニウム談義でした。
 ただ、今回の件で確実に言えることは、
 アスリートは、禁止リストに指定されていない薬剤の中で効果がありそうなものを、ギリギリを常に攻めながら、ドーピングをしている(者がいる)
・・・ということです。
 シャラポワ選手は、「ずっと昔から使っていて、新しく禁止薬剤に指定されたことを知らなかった云々」と述べているようですが、そもそも使っていたのは、まぎれもなく「ドーピング的意図(薬物を使用して、他選手よりも有利になろうとする)」なのです。シャラポワ選手が心筋梗塞のような虚血性心疾患や心不全のわけがないですからね。
 「問題は、禁止リストに該当していたかどうかじゃない。そもそもお前がスポーツマンシップに反してズルをしようとしていたことだ」という話なんですよ。
 まぁ、上記で解説した通り、メルドニウムにそんなに効果があるのかどうかもちょっと怪しいので、ひょっとするとシャラポワ選手は、法外な金を払って「ドーピングした気にさせられ」、汚い医者の儲けの手段に使われただけなのかもしれません💨

 結局、こんな形でドーピング問題はイタチゴッコが続くので、いかんともしがたいです。病院から処方されて使用した薬剤に関しては、禁止リストに関係なく、いったん全て申告という制度にしたほうがいいんじゃないですかね(領収書みたいに)👊 実運用上、難しいのかもしれませんが。


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2016年03月14日

脇坂タレント女医逮捕とテリー伊藤の発言について思うこと。

 逮捕された脇坂とかいう女医について、時事ネタ記事を書く価値すら見いだせないと一度断じたわけですが、テリー伊藤氏がいい感じに燃料を入れてくれたので、書ける気がしてきました(笑)
 長いですよ、覚悟してください。医療ネタでもあるんですが、一応一般記事扱いで。

***
 テリー伊藤「医者は努力していない」 ネット上では批判の声続々

 タレントのテリー伊藤が13日、コメンテーターを務めるTBS系『サンデー・ジャポン』(毎週日曜 前9:54)に出演し、日本の医師免許制度について痛烈に批判した。

 元タレント女医の脇坂英理子容疑者が、診療報酬を水増し請求した詐欺の容疑で逮捕されたニュースを受け、テリーは「医者は遊んでて仕事ができるのか。テレビの演出家でも料理家でも、みんな努力してる。医者って、年をとっても試験がない。だから努力をしてないと思うよ」と、医者という職業に対する持論を展開。

 スタジオゲストのタレント女医・西川史子や医学博士・奥仲哲弥氏から「努力してる人もたくさんいる」と反論されるも、「そういう人もいるけど、患者の話を聞いて薬を出すだけの人もたくさんいる。こんな楽な仕事はない。どう向上心があるか、発表してほしい」と最後まで意見を変えなかった。

 テリーの発言を受け、ネット上では「普通の医者は学会行ったり新しい研究結果を考えたりしてる」「いいお医者さんは本当に体力的にも精神的にも大変」「ひどい言い方。向上心のあるなしはどんな仕事でも個人差がある」など、批判的な書き込みがあふれた。

***

 政治討論でもそうなんですが、この手の論争は、水面下で論点がずれていて、互いに水をかけあって終わっているのがオチなんです。メディアのレベルが低いのも一因だと思うのですが、「どうせやるなら、もっと本質的な議論までさかのぼってしてみろや」という話なんですよ。

 論点を整理しましょう。
 まず、「医者」という概念が広すぎるんですね。例えば、外科と精神科では、同じ「医者」として括っていいのか疑問に思えるほど、生活スタイルも、求められる技能も、ハードさも異なります。よく言われる通り、勤務医と開業医でも全然違いますし、勤務医の中でも大学勤めなのか、大規模病院勤めなのか、中小規模務めなのか、アルバイト中心なのかで全然違います。
 その中には、「理不尽だろこれはw」というレベルの不公平も、極めて容易に認められます。テリー氏が言うように、「適当に話をきいて、適当に薬を出すだけで、あとは遊んでいても暮らせる」というスタイルも確かに現実的に不可能ではないですよ。ただ、多数派の医師はそうではないのであってね。

 ですから、テリー氏が「‘医者は’努力してない」という言い方をしてしまった時点で、こういう反発が来るのは当たり前なのです。「努力していない医者がいる」という局所的な話から、飛躍して全体論に拡張してしまっているわけですから。
 一方で、反論する側も反論する側で、「こういう人もいる」「そういう人ばかりじゃない」「ほとんどの人は良心的」という程度しか言い返さないのは、やはり、局所しか論じることができていないわけです。
 こういう局所の例だけを取り出して、全体を論じようとするやり方は、政治の世界ではバカ左翼やバカ右翼がよくやっていることでして、永久に水掛け論に終始します。そりゃそうです。‘局所的には’どちらも正しいんですから。彼らはそれを本気で信じているからこそ、タチが悪いと思います。

 ところで、やりとりの中でテリー氏は「(努力をしている)そういう人もいるけど」と言っていることからわかる通り、本気で「全員の医者が努力していない」などとは考えていないはずです(もし思ってたらとしたらちょっと頭がおかしい)。
 「医者は努力してない」という過激な言い方をした可能性は2つあって、あまり深く考えずに口が滑っているか、演出家としてあえて炎上して盛り上がるように仕向けたかでしょう。どちらかというと前者な気がしますけどね・・・。

 ですから、まとめると「努力していない医者がいる」は正しいし、「そういう医者ばかりじゃない」も正しい。そして「医者は努力してない」は論理的に誤り。これでファイナルアンサーです。

 で、次に、この論争において、本当に重要な論点(テリー氏の発言を好意的に汲み取ったときの真意)は何なのかというと
医者に、継続的に向上心をもたせたり、技術や知識の維持を努力させるような仕組みがない。(だから、脇坂みたいな犯罪者が出る。なんとかしろ)
 ということです。

 この点に関していえば、はっきり言って正しいですよ。基本的に医者は、最初に医師国家試験を通ってしまえば、医師免許としては更新制度がなく生涯通用します。ですから、自己研鑚のための尻たたきにはなりません。

 ちなみに、専門医制度というものがあります。「ただの医者」じゃなくて、一定の基準を満たせば、例えば「外科専門医」といったような資格が与えられます。この資格は更新制です。学会に出席したり、症例の経験数を維持し続けなければいけません。
 今どきのほとんどの医師は専門医資格を持つことを自分の臨床能力を証明する一つのオーソライズ手段と考えていますから、「専門医資格の更新をもって医者は努力している」という反論もありうるでしょう。少なくとも、それに従っている医師が多数派であるわけですからね。

 しかしですね。
 そもそも専門医資格は国家資格ではなく本質的に学会が指定する民間資格です。別に専門医がなくたって、医者として働けるものは働けるのです。勤務医なら「ちょっとおかしい奴なのかな・・・」と雇用者に思われるかもしれませんが、実際の能力が問題なければ大して障害にはなりませんし、開業医なら自分が城の主なんですから言わずもがなです。
 それに、専門医の更新がそんなに難しいものなのかと問われれば、そこまでじゃないですよ。向上心なく平凡に医者をやっていても、普通に手続きしてれば更新できる程度のものです。

 だから、「専門医資格制度は更新制だから、医者は努力している」というのも、きちんとした反証にはなってなくて、
「医者に、継続的に向上心をもたせたり、技術や知識の維持を努力させるような仕組みがない」
 という事実自体は、正しいのです。
 正確に言えば、「それなりの制度はあるし、多くの医者はそれに従っているが、患者達が理想の医者像として要求するレベルの‘向上心’や‘努力’を強いる制度までは存在せず、その部分は医師個々人に任されている」です。
 日本の患者は、医者に「聖人」レベルの向上心や努力や自己犠牲を潜在的に要求する民族ですからね笑。


 すると、論点は次のように推移していきます。
 テリー氏のような方なら、こう言うでしょう。
専門医の更新制度を厳しくしたり(パスできなければ専門医剥奪)、医師免許の更新制度を新設すればいい

 それは確かにそうです。理念と建前としては、そうなるでしょう。私もそれができるのなら賛成ですよ。私自身は向上心を保って、努力をしている側の人間ですから、脇坂みたいな医者がバンバン消えていってくれたほうが、そりゃ気持ちいいです。

 でも、それをやって、経済原理的に誰が得するの?・・・っていう話になるんですよ。
 テリー氏はおそらくそこまでは考えて発言していないでしょう(だから浅薄に感じられる)。

 医者の査定の仕組みが甘いというのを認めたとして、じゃあ厳しい更新制度を設けたとしましょう。で、資質を満たさない医者がバンバン落ちる。私の体感では、そうしたら、毎年1〜2割くらいの医者はダメなんじゃないかというくらい、ダメ医者やレベルの低い医者は多いですよ。
 それで、毎年一定数の医者が消えたとして、曲がりなりにも彼らが診ていた患者はどうするんですか?誰がみるんでしょう。残りの医者ですよね。今の医療需要では、現場はパンパンで余力がありません。
 一人の医者が消えたら、彼が受け持っていた、延べ200人/月(外来25人/日を週2回×4週と計算)は、誰かがみないといけないのです。残った優秀な医者は、既に患者満杯でエグらされているのに、さらに仕事が増えるわけです。そして、それによって直接の激しい煽りを食らう勤務医の給料は1円たりとも増えません
 一方、患者のほうでは、医者が減少することによって、「診てもらえない」「たらい回しにされた」というケースが増えるのです。

 ここで、バカプロ市民は言うでしょう。「医者を増やせばいい」と。
 医学部は、既に日本の学生の「上から優秀な順に」入ってる形になっているんですよ。医学部に入るの難しいですよね?医者を増やすと「優秀な上のほう」が増えるんじゃなくて、「今の医者になっている層より、さらに下の層」が、医者になるようになるんです。すると、彼らは医師の資質を満たすのか?
 どうして現状で医師になれている層の下っ端を試験で落とそうという話をしているというのに、本来的にそれより頭脳的に劣る集団を医者として増やして、その試験をクリアできると言うのでしょうか?

 百歩譲って、医者を減らすことまではできないから、更新のときに、「水準を満たしてないですよ〜」という警告通知(ただし更新に支障はなし)だけは来るという仕組みだとしたらどうでしょうか?意味あります?笑
 ダメ医者っていうのは、「おまえはダメだ」という通達がされても何も感じないし、何も行動変容しないからダメ医者なんです。

 医療現場では「あの人はダメ医者」「あの医者はヤバい」と、周囲の医者や医療スタッフから思われている状況って、正直な話、かなり高頻度にあります。私の体感では「医者2〜30人に1人はヤバい」です(!・・・)
 それでも、なぜ駆逐できないかというと、「それでも頭数として、いないよりいたほうがマシだから」なんですよ。
  ですから、「専門医資格剥奪」だってほとんど有効性がありません。
 「すいません、専門医剥奪されました・・・」「そうか。でも、患者は今まで通りみてくれな。来年はまた専門医とってな」
 →これで終わるだけですよ。
 つまり、そういうレベルで、医療需給というのはひっ迫していて、現在の「公平な」医療制度の枠の範囲内でそんなことをやろうとしても、患者も含めて誰も得しないというのが真実なのです。
 そんな、綺麗ごとが通用しない不完全で汚い現実を生暖かい目でみながら、「まぁでもしょうがないよね」といって、多数派のまともな医者は自分の仕事に励むし、患者はなんとか「自分だけはよい医者にかかろう」と努力して情報を集めるのです。


 逆に、向上心や努力を維持させるための解決策として、
優秀なお医者さんが、たくさんお金をもらえるように、ダメな医者は儲からないようにすればよい
 と言う人もいるでしょう。新自由主義者あたりですかね。
 テリー氏が「テレビの演出家でも料理家でも皆努力している」と言うのは、努力と成果がお金に紐づいているから、すなわち明確な「市場原理」に支配されているからです。

 これは原理的にはいい方法ですよ。超長期的にみれば、「力不足の医者が淘汰される」という目的は達成されるでしょう。
 ですが、医者側に市場原理が導入されるということは、患者側にも導入されるということです。お金持ちは「学歴も優秀で向上心があって努力も怠らない医者」に、法外な金額を払ってかかることができ、貧乏人は「低学歴で向上心がなく、努力もしない医者」にしかかかれない傾向になるということになります。
 米国の医療制度はこんな感じですが、それでいいのかという問題が一つ。
 優秀な医者側からしたら、「少しの患者を高い単価で診察して、収入も高い(=向上心と努力が報われる)」のですから、現在より劇的に待遇が改善されるわけで、大歓迎でしょうけどね。

 もう一つの問題は、超長期的に市場原理が働けば、確かに「力不足の医者が淘汰される」といえますが、先ほども述べた通り、高齢社会にあってどんどん医療需要が伸びている(高齢者はどんどん病気になるから)日本においては、圧倒的に医者は「売り手市場」であるということです。
 短中期的にしばらくは売り手市場である以上、いくら市場原理を導入したところで、底辺の医者であっても厚遇は厚遇です。優秀な医者が「すごく報われる」ようになって、ダメ医者が「普通においしい」くらいになるだけであって、ダメ医者を市場から「排除」するまでには全く至らないのです。

 というわけで、全てのことはじめ「お金(経済)」の原理で根底から考えたとき、「圧倒的売り手市場である以上、ダメ医者を排除する方法なんてない(理念的に主張したところで、それは空理空論に終わる)」というのが結論なのです。

 ちなみに、現行体制の中では空理空論に終わるからといって、議論する意味がないということではありません。「(遠くにある)理念」をぶつけあって、社会の方向性を決めていく・・・これこそが「政治家」の仕事ですから。
「医者の数を3倍に増やして、TPPと一緒に医療にも市場原理導入!これでダメ医者も排除する!」
ないしは、
「専門医更新制度を国の指導のもと難化。専門医資格を持つ医師には、+100万/年の昇給手当。その財源は、増税or患者自己負担増により賄う!」
 これくらいまで、考察を深めて言えば多少の価値があるってもんです。浅薄な知識しかないTVのコメンテーターでは無理でしょう。
 ただ、これができている政治家がはたして何人いるか・・・水掛け論ばかりして議論を深化させられない政治家もたくさんいますよね。


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