2016年09月19日

小林麻央さんの乳癌について

 本人がブログを書き始めたことで、第三者の勝手な憶測でない経緯がわかってきましたので、少しこの話題を皮切りに、癌について書きたいと思います。

 まぁ、あまり私としても言及したい内容ではないのですが、今わかる情報から客観的に判断すると、彼女の生命予後(命の見通しのことです)は、正直結構厳しいものにならざるを得ないです。
 具体的な数字はもちろん私が認識できる範囲ではないですが、おそらく主治医は数カ月とか1年単位で考えているのではないかと推測します。

 私は私生活でも、非医師の友人からは「小林麻央さんって、ぶっちゃけどうなの」とよく尋ねられます。
 こういう会話の中でやりとりをしていると、やっぱり医療系じゃない人の癌の知識は、全く不十分であると痛感します。テレビとかでなんとなくのイメージはあるけれども、やっぱり皆さんきちんとはわかっていないんですよね💧
 そういうのを補完するのが、我々の仕事でもあるわけです。そんなわけで、記事にしようと思いました。


 まず、癌という病気の概念を平易な言葉でおさらいします。
(1)おかしな細胞ができる。
(2)おかしな細胞は、無秩序に増える性質をもっている。だから、最初は1個の細胞であったが、どんどん塊として大きくなる。細胞分裂は、×2の指数関数で増えるので、そのスピードは非常に速い。
(3)おかしな細胞は、その場に留まらず、体液(血液やリンパ液)の流れに乗って、遠くに飛んでいく性質がある。身体のどこか別の場所に1個の癌細胞が定着したら、そこでも(2)と同じように増え始める。これが「転移」である。
(4)最終的に、身体のあちこちで増殖した癌によって、いろいろな臓器が障害を受け、死に至る。


 さて、「癌かもしれない」という疑いが生じたとき、種々の検査を駆使して、診断を行います。
 癌の治療というのはいずれも高いリスクを伴うものばかりですから、「たぶん癌だよ」くらいの適当な手応えで患者に「治療しましょう」と提案するなんてことはできません(「たぶん風邪だよ」とは全く次元が異なる話です)。ですから「間違いなく癌であろう」と言えるまで、できる限りの検査によって推察を突き詰めます👊
 診断の観点には2つあります。
(A)そもそも癌であるのかどうか
(B)癌だとしたら、どのくらい進んでいるのか(ステージ分類)

 まず、(A)の手段ですが、超音波やCT,MRIといった画像検査が手段として挙げられます。身体を傷つけずに撮影できますから、何かしらの画像検査は必ずやります。
 これらだけでも「癌かどうか」は、かなり絞り込むことができるのですが、全く完璧ではありません💦「99%決まり」という典型的な画像所見であればまだしも、「微妙・・・」ということは高頻度にあります。なぜなら、これらの画像検査というのは、実物そのものを見ているわけではなく、あくまで影絵のような間接的な情報でしかないからです。

 そこで、より確実な方法として「生検」という方法があります。これは怪しい腫瘍に針を刺して一部細胞を取ってきて、顕微鏡で観察するというものです。
 もちろん、技術的に空振りして腫瘍を外してしまい、周囲の正常な組織を観察してしまえば「正常です」という誤診をしてしまう可能性は0%でありません。しかし、生検をする医師としては、それだけは絶対に避けようと最大限の努力を払います(生検も1個だけではなく、何個か取ったりします)から、見逃す確率はかなり低いと想定されます(というか、そこは医者を信じるしかないです)。
 ですから、一般的には生検は確定診断として最も信頼性が高いものです。

 そして、(A)の行程によって、「癌であろう」となったら、次は(B)ステージを考えます(ほぼAと同時のこともありますが)。
 そこで、また、特に重要な観点2つに分かれます。
(ア)局所的にどれくらい進んでいるか
(イ)転移があるのか

 まず、(ア)ですが、もちろん腫瘍の近くに重要な臓器があったらそれを潰したりしてダメージが来ますから、そういう所見がないかどうかを見ます。でも、それ以上に大事なのは、一般的には「腫瘍が大きければ大きいほど、転移もしている可能性が高い」という法則が信じられているからです。
 ですから、「大きい(ないしは深い)」ということは、転移をしている可能性が高くなってくるということなのです。
 (イ)はその名の通り、診断のところで述べたいくつかの画像検査でもって、転移があるかどうかをみます。
 ここで注意点が2つあります。
 まず1つは、「原発巣(おおもとの癌のこと)が小さくても転移が起きる」というケースもあるということです。基本的には「原発巣が大きい」ほど、発病してからの時間が長いということですから、転移が起きている可能性も高いわけですが、もう早い段階からサッサと転移をしてしまう癌もあります。当然、こういう癌はやっかいなものです。
 2つ目は、「画像検査の転移巣の診断は、やはり完璧ではない」ということです。CTやMRIで「これは転移病変です」と言えるには、その画像に映ってくるくらいには、転移した癌細胞がその行き先である程度増殖して、病変の塊が大きくなっていないといけません
 転移した癌細胞「1個」とか「数個」とかそんなものを、「影絵」で検出することはできないのです。近年はPETなど、比較的新しい画像技術でかなり細かい転移も検出できるようになってきていますが、やはり細胞レベルで検出するには、「細胞はあまりにも小さすぎる」のです。

 そんなわけで、画像で明らかに転移病変があるなら「転移あり」と診断できますが、画像でないからと言って「転移がない」とは、病気が癌である限り、いかなる場合にも断言することはできません。
 あくまで「画像で見出される範囲の転移病変はない」という表現が正しいです。
 ただ、「わからない」「断言できない」を連発しているだけでは何も始まりませんから、そこは最終的に決断をする必要があります。
 つまり、画像上で転移病変がなくても、原発巣が「大きい(深い)」なら、転移をしている可能性があるので、それを想定した治療をする。画像上に転移病変がなくて、原発巣も十分に「小さい(浅い)」なら、原発巣だけの治療をすればよい。
 ・・・おおまかに言うと、こういう形で治療方針が決定されるわけです。


 続きは、また今度💨


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2016年03月12日

総合かぜ薬と解熱鎮痛薬

 脇坂とかいう逮捕されたタレント女医について時事ネタ記事でも書こうかと思ったのですが、書く対象としての価値すら見い出せないので、普通に医学・医療記事を更新します(笑)

 前回、解熱鎮痛薬として代表的な「NSAID」と「アセトアミノフェン」を紹介しました。
 ここで、総合感冒薬PLの成分を復習してみましょう。解熱鎮痛薬の成分としては、「サリチル酸」と「アセトアミノフェン」が入っていましたね💡
 サリチル酸は、NSAIDに分類される薬の中では最も古典的なものです。「アスピリン」と言ってもいいです(厳密には違いますが、まぁだいたい一緒です)。これは、本来は物質名ではなくて商品名なのですが、こっちの呼称のほうがピンと来る人も多いかもしれませんね(「ファミコン」みたいなものです)。
 サリチル酸は、解熱鎮痛作用はさほど強くありません。新世代のNSAID(ロキソニンやイブ)の方がその点は改良されて効き目が強くなっています👊

 アセトアミノフェンは、新世代のNSAIDより強いということはさすがにないですが、ちゃんと十分な用量を使えば、同等くらいの効き目があります✋

 両者とも古典的な薬ですが、他の薬との飲み合わせが問題になることがほとんどなく、比較的気軽に出しやすいということで、PLに配合されているわけですね✨


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2016年02月21日

NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)

 「ステロイド以外」の解熱鎮痛薬をもう少し詳しくみてみます

 これらは、「非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)」と総称されます。
 医学用語では、略してNSAID(エヌセード。複数形NSAIDsエヌセーズとも言います)と呼ぶ一群の薬になります✋

 このNSAIDに含めてしまうこともあるのですが、一種類だけ効果の出方が他とは異なる薬があります。それは「アセトアミノフェン」です🚩

 ですから、ステロイド以外の解熱鎮痛薬は、以下のように分けると最も正確です。
・NSAID
・アセトアミノフェン



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2016年02月19日

解熱鎮痛薬の分類

 解熱鎮痛薬についてみてみましょう👀

 解熱鎮痛薬は、おしなべて「炎症」を抑えることによって効果を発揮します⤴
 「炎症」とは、「何らかの有害な刺激に対する免疫応答によって出現する症候」のことを言います。
 そしてその症候は、発赤・熱感・腫脹・疼痛を伴うというのが特徴的です。これらを、「炎症の4徴候」と呼びます。
 この所見があるときに、「炎症が起きている」と判断するのです👓

 傷を負ったときを思い浮かべてみてください。赤くなって(発赤)、熱くなって(熱感)、腫れて(腫脹)、痛い(疼痛)ですよね。あれはまさに炎症が起きているのです💡
 風邪は「上気道に炎症が起きている状態」と既に述べました。確認してみましょう。ノドは赤くなって痛いし、熱が出るし、リンパ節が腫れたりします。やはり炎症の状態ですね💨

 この炎症のプロセスを遮断する薬が、「解熱鎮痛薬」です。ブロックの仕方は薬剤により様々ですが、大きく以下のように分けることができます。
・ステロイド
・ステロイド以外


 ステロイドは、人類の大発見(発見者はノーベル賞を受賞しています)ともいえる非常に強力な薬です。ただし副作用も多いので、風邪くらいで使うことはありません。切り札的な存在なのです👊
 普通の病気でもっぱら使用するのは、後者の「ステロイド以外」になります🚩


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2016年02月17日

鎮咳薬の使い分け

 こうみると、咳の種類によって使い分けが必要なこともみえてきますね✨

 例えば、病気によっては空咳(専門用語では乾性咳嗽と言います)といって、痰がないのに咳が起きるケースがあります。この場合は、「咳そのものを止める薬」は有効ですが、「痰のキレをよくする薬」はあまり筋がいいとは言えません。

 逆に、そもそも論として、風邪などの感染症の状態では「本来なら、咳は止めるべきではない」という話がありました。この観点からは、やはりむやみに「咳そのものを止める薬」は使うべきではないと言えます。
 特に痰が絡んでいるような普通の風邪の咳(湿性咳嗽と言います)の場合、「痰のキレをよくする」薬などでまず対応をして、それでも厳しいというなら、そこに「咳そのものを止める薬」を追加するというのが手順としては正確です👊

 「気道を広げる薬」はどうでしょう。
 葛根湯のところで説明した「エフェドリン」という成分は、これに該当しますね。しかし、このタイプの薬は、結構作用が強いものが多いので、あまりに気軽には出されません。事実、純粋成分薬の「エフェドリン」も規制が厳しくなったと述べました💨
 ただし、このタイプの薬が非常に有効なケースもあります。それは、バックグラウンドとして、「喘息」ないしはその気があるような患者さんです💣
 喘息は、慢性的に気道が炎症を起こしていて、気道が狭くなりやすい病態です。だから、呼吸がヒューヒュー、ゼーゼーするのです。そこに加えて風邪などをひいてしまうと、ことさら狭くなってしまうんですね。こういう場合に、特別にこのタイプの薬を加えたりするのです💡


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