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2016年09月26日

近藤誠「がんもどき理論」について

 前回、抗癌剤に関して、詳しくお話ししました。
 さて、その流れで、かの有名な(?)慶應医OBである近藤誠医師について書きたいと思います。
 この人は、もともと放射線科医なんですが、何かをきっかけに思想が変化したようで、「外科手術・化学療法・放射線療法など、全て無効であるから、癌は放置すべき。検診もいくべきでない」という独特の理論を展開しています。

 この人の主張は、いわゆる自然科学における知識の蓄積のセオリーというものから完全に逸脱していますので、基本的にはキワモノ医者(医師・医学者というより宗教の教祖)です。
 膨大な患者数を集めて行われてきた大規模臨床試験の結果を全く間違っていると決めつけ、自分が経験した範囲の症例だとか、重箱の隅をつつくレベルの小さな論文を引用して、「癌の治療は全部意味がない」とまで言いきるのですから、経験哲学の祖フランシス・ベーコンも卒倒するレベルです(笑)。
 ただ、彼の「がんもどき理論」には、少し有用に解釈できる部分もありますので、今回取り上げてみようというわけです。

 そもそも彼の「がんもどき理論」とはどういう理論なのでしょうか?
 簡単にまとめるとこういうことになります。

■いわゆる癌には、本当に悪性度の高い「癌」と、それっぽく見えるだけの「がんもどき」がある。
 悪いものは最初から悪いと決まっている。「がんもどき」はいつまでも「癌」になることはない。
 だから、早期発見したところで、本当に悪い「癌」なのならば、とっくに転移をしているから、検診による早期発見という行為は無意味である。
 同様に、早く見つかったからといって原発巣を手術で切除するということも、本当の「癌」ならば無意味である。
 また、最初から悪いと決まっているのだから、抗癌剤や放射線療法も効くわけはなく、副作用ばかりでむしろ寿命を縮め、有害なだけである。
 一般的な医者が、「早期発見したおかげで完治した」などというのは、「がんもどき」を治しただけで、ただの自己満足である。抗癌剤も含め、全ては医者と製薬会社のお金儲けのためである。その「がんもどき」は、放置しても永遠にそのままで、命を奪うことはない。医療はわざと「病気」を作り出している。


 「世の中には反論できないものは存在しない」とはよく言ったものですが、彼の理論も、科学の隙間を縫ってよく練り上げられた理論です(悪い意味で)。
 いかなる科学的事実も、直接的な証拠を得ることはできません。数多くの客観的な実験観察データから「それならば、こうに違いない」という、「最も確からしい推論」の積み重ねで成り立っているわけです。
 科学的実証は「○○である可能性が極めて高い」とは述べますが、「絶対に××でない」とまでは言えません。だからと言って、「絶対に××でないとは言えないから○○を信じない」ということをしていては、いつまでも前に進みません。ですから、ひとまず「これだけの証拠が揃っているなら、○○は正しい」ということにして、それに乗っかり、次の科学的課題解決に進みます。もちろん、後になって○○が訂正されることもありますが、それも含めて自然科学のプロセスです。
 近藤医師の行いは、「絶対に××でないとは言えないから、××が正しい。○○は全く間違っている」というぶっ飛んだ論理展開ですから、まぁ科学者としては認められないでしょう。宗教家です。


 さて、しかし、医者が宗教家になってはいけないという決まりはありませんし、宗教は「信じて、それで幸せになれるなら信じればいい(他人に迷惑をかけなければ)」ものです。
 こういう観点で考えると、実は近藤理論は、「信じたほうが幸せなケース」があります。
 それが、小林麻央さんのような「若年者における悪性度の高い癌」です。
 もともと若い人で癌になることは稀であって、若いのに癌になるということは、細胞にはよっぽど尋常じゃない変化が起きていると考えられます。
 それが、表現を変えれば「悪性度が高い」となるわけで、手術する間もなくあっという間に転移をしてしまうし、治療もただひたすら効き目が悪いということになります。

 小林麻央さんの場合、ブログを拝見すると、乳腺専門医に「大丈夫だと思う。念のため6カ月後に再診してください」と言われています。
 この判断は複数名の専門医で意見が一致しているようですから、「誤診」ということにはならないでしょう。本当にそのときの画像所見としては悪性に見えなかったのだと思います。そして、6カ月後の再診という判断も妥当でしょう。
 そして、小林麻央さん本人は再診が8カ月後になってしまった(2カ月遅く)ということなので、これが一般的に後悔の対象となるポイントかと思います。
 ただ、普通の医者感覚として、この2カ月間の違いがそこまで決定的だったのか?と言われると、ちょっと微妙なところなんですよね。8カ月後にもう相当な進行癌になってしまっていたという進行スピードならば、仮に予定通り6カ月後にみたとしても、やはりとっくに進行癌になっている可能性が高かったのではないかとも思えるのです。
 では、もし3カ月後に再診していたら?1カ月ごとのtight follow upだったら?・・・となってくるとキリがなありません。良性に見えた人でも全員1カ月おきの診察にするのか、という話になってしまいます。

 そこで、近藤理論の登場となるわけですよ。
 小林麻央さんの場合、若いのに乳房に腫瘍ができて、それは「がんもどき」ではなく、本当の「癌」だったわけです。そして、それは本当に悪い癌であるから、発見時には既に(目に見えないレベルで)転移をしていて、救いようのないものである。だから、「あのタイミングで検診にいっておけば」とか「○カ月後にみてもらっていれば」という仮説は全て無意味、簡単に言ってしまえば「運命的に最初から助からない」・・・というわけです。
 これはとても残酷な解釈のように思えるかもしれませんが、「治療のタイミングを逃したようにみえて、末期癌になってしまった」人にとっては、かえって気持ちが楽になる考え方でもあります。
 
 過去は決して変えることはできないので、過去の事実や行いは、今の自分にとって都合よく解釈したほうが幸せです。そして、「では、自分が幸せになるためには、これからは何をするか」を考えるべきです(なんか、アドラー心理学っぽくなってきた)。
 こんなところに、一応「近藤教」の活用の場があるかな・・・と思います。

 近藤教に従えば、さらに抗癌剤もやるべきではないということになるのでしょうが、これはどうですかね。
 若い以上、少なくとも一発はやってみるべきだと思います。可能性は低くても、著効する一縷の望みにかけてみる価値があります。
 もし奏功しなかった場合(そしてそれが今の小林麻央さんの状況に一致すると思うのですが)、化学療法を続けるべきかどうかは難しい判断です。それでも、前回お話ししたように、予後延長効果が数カ月期待できるかどうかであったとしても、その時間は「お別れの準備」に回すことができますから、若い患者であるからこそ、やる意義がないということにはならないでしょう。


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