2011年03月15日

manaveeに関する論評

 この記事では、manaveの「価値」について考えてみます👀

@潜在的な学習者層の掘り起し
 manaveeは「誰でも無料でやれる」ということを一つの特徴として持っている。この言霊が持つ力は強力である。「manaveeなら無料で受験勉強ができる」という言葉によって、「それならちょっと覗いてみようかな」という人が相当数存在する。それほどに「無料」が人を突き動かす力はとても大きいということが知られている。

 そして、「ちょっと覗いてみた人」の中には、自分のツボにはまるmanaveeの授業と出会える人がいるだろう。そんな小さなきっかけをもとにして、彼は一生懸命勉強をするようになるかもしれない。ある程度勉強をした経験がある人ならわかると思うが、「本気で勉強してみよう」と思い立つきっかけは人によって様々である。それは良き師との出会いかもしれないし、反骨精神であったりする。

 かつて『ドラゴン桜』という漫画があった。「低偏差値の高校生達をカリスマ教師が東大合格に導く」という作品で、一世を風靡した。この年の東大受験者数が増加したということがニュースにもなっていて、『ドラゴン桜』の影響があるのでは?という推察もなされていた。
 実際、『ドラゴン桜』を読むだけで東大に合格ができるわけではない。読んだはいいが、その通りに実践できない者も多いだろうし、忠実にできたとしても結果的に東大に落ちて滑り止め校に進学する者もいるだろう。しかし、本来なら「東大なんて無理無理」という前提で生きていたはずの高校生の中に、これを読んで「あわよくばいけるのか?目指してみよう」と思うものが出てきた。それは、結果的に本人の実力や国民の実力向上に寄与したはずだ。それが、『ドラゴン桜』の一番の功績である。

  さて、「お金には困ってないが、無料なら覗いてみる」といった人以外にも、当然「学習塾や家庭教師に払うお金が本当になくて、完全に独力でやるしかないと思って途方に暮れていた」という人の心に灯りがともることもあるだろう。
 日本という豊かな国において、このような人は決して多数派ではないかもしれない。しかし、確実に一定数存在することも間違いのない事実である。そのような人達は、「これでやっていけるかもしれない!」という上記と同じ動機を得られるということはもちろん、本来なら「独力」しか手段がなかったところに微力でも「助け」が入るのであるから、実利的にも精神的にも心強いサポートになる。そして、彼らのような人達こそ、manaveeが大切にしている学生の一つであることは間違いない。

 manaveeそれ自体が提供する授業の質が仮に十分でなかったとしても、「無料でこういうサービスがあるなら、自分もやれるかもしれない」と思う学生が出てくる。彼がそれをきっかけに、manaveeで最初に覗いてみた科目の授業の範囲を超えて、自習に励むようになれば当然学力は向上するだろう。
 これは、既存の有料サービスではなかなか提供することができなかった価値である。


Aロングテール的な教師選択
 「ロングテール」とは、簡単に言えば、インターネットを用いたビジネスで実現するようになった「薄く広い」商品の品揃えのことである。
 既存の量販店では、「ごく少数の熱狂的な人が興味を持つかもしれないが、絶対数として売上が期待できないもの」は陳列することが不可能であった。陳列スペースは有限であり、そのような商品を置くことで本来もっと売れるはずだった商品の販売機会を失ってしまうからである。

 近年になってネットショップという販売形態が出現し、このロングテールという概念が生まれた。ネット上では、「売れにくい商品」に要求される先のような占有コストは非常に小さくできるという特徴がある。結果的に、一つ一つは大半の人が「こんなもの誰が買うんだ」という商品でも、それらを多岐にわたって幅広く陳列することで、一つの商品には一人の買い手しかつかなくても、全体としては商売を成り立たせることができるようになったのである。

 manaveeは無料サービスであるため商売ではないが、教師選択という点において、このロングテールを体現している。
 自分にとってのよい先生、@であげたような勉強するきっかけを与えてくれるような先生は、必ずしも全国的に有名なカリスマ教師とは限らない。カリスマ教師は、「もっとも売れ行きがよい商品」であり、それを選択する学生が多数を占めることは間違いないが、それが100%の学生に当てはまるわけではない。残りの数%の学生の中には、「親しみやすい」とか「かわいい」とか、「ふつう」とは別の基準でよい先生をみつける人が必ずいるのである。
 この場合、いわゆる「短所」とされるような特徴も、場合によっては「長所」になる可能性もある。例えば、「話下手」というのも通常の塾講師にとっては致命的な弱点だが、そこに「萌える」という理由で選択する学生もいる。

 これを突き詰めれば、「誰押し」というようなAKB的な楽しみ方もできたりする。やはり、これも有料のサービスでは、なかなか真似ができない特徴である。


Bリファレンスおよび補強パッチとしての使い方
 manaveeの授業は一般的に「カリキュラム」という単位で構成されている。一貫して、何か科目を学びたいという希望がある場合、それは「コース」を選択することになる。
 後者の「コース」に関しては、質の面でも量の面でも、現状よりも一層の拡張と充実が期待されている。まだまだ貧弱である「コース」は、manaveeが現在進行形で力を入れて質と量の改善をはかろうとしているものに違いない。

 では、「コース」というプログラムを一旦離れて、既に多く存在する「カリキュラム」だけで、manaveeを最も有効に活用する方法はないだろうか?それに対しては、「リファレンス」や「補強パッチ」がもっとも優れた回答として挙げられるであろう。
 すなわち、学校や自習、ときに塾で「あの範囲よくわからなかったな〜」「苦手で困ってるんだよな〜」というような部分、もしくは「居眠りして聞き逃してしまった」「病気で休んで抜けてしまった」といった部分があれば、manaveeでその該当箇所を探してみてみる。
 そこで該当箇所があって「わかりやすかった!スッキリした!」とか「抜けていた部分がバッチリ埋まった!」となれば、これは最高の結果に間違いない。

 また、manaveeには、いわゆる既存の学習塾にあるような「授業コマの制限時間」という概念が存在しない。つまり、通常の学校の授業や塾の授業では、「本当はこういう+αの知識も教えたいけど、時間の都合上省かざるを得ない」という細かいところまで、講義の中で扱うことができる。このような特徴も、上記のような使い方をより強力なものにしうる。


C痒いところを掻く
 いくら、既存の学習塾に通っている学生でも、すべての科目の授業をフルに選択できるわけではない。例えば、いわゆるマイナー科目と呼ばれるような、理系の学生にとっての社会や古典、また、文系の学生にとっての理科といったものは、センター試験対策が必要であるが、「塾の講座をとるほどではない」というケースが存在する。
 また、本音としてはやりたくても、そこまでの予算はさすがにないといった場合もある。

 これはすでに成績優秀な学生であって、「そんなマイナー科目くらい、独力で教材読んで自習すれば十分」と考えていた人にとっても、便益がある可能性がある。
 実際、私自身は受験時代にセンター試験の社会科目である「倫理」は、ほぼ独学で対応したが、manaveeに存在する倫理のカリキュラムを今みて「現役時代にこれがあったら助かったのに」という感想を持った。

 独学で十分な成績を残せる人でも、「自分で読む」のと「人から聞く」のでは、大きな違いがある。基本線としては独学が柱に据えてあったとしても、自分が構築していた知識の塊の中に、外部からの風が吹き込むことで、「そういう見方もあったか」「より一層これで整理できた」というように、学習効率は大幅に増すのである。


D平素の学習や先取り学習および社会人再学習
 manaveeを「受験対策」という小さな視点でしか眺めていないとみえてこない価値がこれである。

 世の中には、高校1〜2年生や中学生が「大学受験レベルの勉強をしてはいけない」という決まりはどこにもない。むしろ、勉強は「高校3年生または浪人生がやるもの」ということ自体が思い込みにすぎない。
 例えば、高校1年生が「ある科目が面白い」と感じたとする。どんどんその先を学んでみたいと思う。このような「必須ではないが自発的にすすめる勉強」をするときに、お金を使わなくていいツールがあるのは素晴らしいことである。

 このように骨のある人でなくても、「まあ、暇だしmanaveeの動画でもボーッとみてみるか」という具合に低学年の学生が活用したとき、それは一定のレベルで彼の実力向上に寄与することは間違いない。高校2年生までにmanaveeで下地をつくっておいて、受験生になったらお金を払ってちゃんとした塾に行く・・・もしこういうプロセスを踏んだら、彼にとってその科目は強みになっているに違いない。

 さて、同様のことは社会人にとっての再学習にもあてはまる。社会人には「学生の頃にもっと教養を深めておけばよかった」という欲求が無視できないレベルで存在する。確かに直接は役立たないかもしれないが、例えば「歴史を勉強し直したいなあ」という漠然とした希望が心の奥底にあったりする。しかし、仕事も忙しいし、わざわざ本を買ってきて腰を据えて勉強をするというほどのものでもない。結果的に、儚い希望だけをもって何もできない日々が続く。
 こんなときに、manaveeの授業は間違いなく有用である。YouTubeというプラットフォームを用いているため、必ずしも会員登録をしなくても授業の聴講はできるし、こうして「1日1個動画をみる」という程度の極めて軽い負担で、ちょっとした欲求を満たすことができる。
 もちろん、そこから転じて「本格的な再受験を!」というようなきっかけ(@の便益)を与える可能性もある。


E日本発、世界へ発信する教育インフラ
 現在教育界において、例えばハーバード大が授業を無料でWEB公開提供するといったOpen Educationがとてもホットなトピックとなっている。そして、manaveeが作り出そうとする教育の循環、すなわち、「manaveeが役に立った。ありがとうmanavee」と思った学生が、大学生や社会人になったときに「自分もmanaveeで教えて貢献したい」となって、次の世代へ無料の教育機会が伝わっていくというモデルは、非常にユニークである。

 日本における教育格差は、格差といっても、実は世界平均からみれば相対的に小さなものかもしれない。しかし、遥かに深刻な問題を抱えている途上国はたくさんある。そのような国がmanaveeの持つノウハウを参考にして、一定の教育レベルの底上げを試みるという気運が高まって、なんら不自然なことはない。

 これは、立派な日本発のイノベーションの輸出である。
 世界の平和の実現のためには、世界市民たる人類全体のインテリジェンスレベルの向上が不可欠であり、manaveeは国家の力に頼らず低コストでその活動の原動力となりうる。
 manavee代表の花房氏が思い描く「学びたいと思ったジャンルの授業の動画が、ネットで検索すれば簡単にみつかる社会」が実現したとき、manaveeを発端とする教育の革命は、最大級の歴史的評価を受ける可能性があるといっても過言ではないと思う。